2019年3月28日。
とある小説の感想記事のアクセスが僅かながら急に増えた。
小説投稿サイト「カクヨム」にて投稿された後、書籍化された『ひとりぼっちのソユーズ』。
おしなべてどの記事も控えめなアクセス数のため、メディア化などをきっかけに一時的に特定の記事のアクセス数が増えるとすぐに分かる。
『ひとりぼっちのソユーズ』は私が愛して止まない小説のひとつだったので、メディア化を通してより多くの人の目に触れる機会が増えるのはとても喜ばしいことだと思っていた。
けれども、検索の末たどり着いたのは正反対の情報だった。
詳しい経緯や著者である七瀬夏扉さんの思いは上記を読んでほしい。
出版業界やアニメ業界に詳しくないので、メディア化の話が立ち消えになったということに関しては、「そういう事もあるのかもしれない」と物分かりよく受け止めようと思う。
ただひとつ、担当編集の方が七瀬さんに送ったメールに書かれていたという「ソユーズは出版するべきではなかった。失敗だった」という言葉を否定したくて、この文章を書いている。
もしかしたら七瀬さんや書籍化に関わった人たち、読者の人たちの思いをすべてないがしろにすることになるかもしれないけれど、それでも私は私の言葉で思いを伝えたい。
ひとりの読者として言いたい。
『ひとりぼっちのソユーズ』の書籍化は失敗なんかじゃない。
間違っても、担当編集の方を糾弾したいのではない。
互いにより良い作品を生み出そうとしていたはずなのに、結果たどり着いてしまった「失敗だった」という言葉がかなしい。
撤回を求めるでもなく、ただ私にとっては決して失敗なんかではない、ということをちゃんと言いたい。
そもそも、書籍化されなければ、私が『ひとりぼっちのソユーズ』に出会うことはきっとなかった。
ネット上で小説を読むということにまだまだ馴染みがなく、漫画の一部はKindleに乗り換えたものの、手に取るのは専ら紙の書籍が多い。
発売当初、新刊として平積みされているこの作品を見つけた時、タイトルの響きとあらすじから間違いなく私好みの作品だという予感がした。
私がよく読む他のブログでも、絶賛されていたというのも相まって、手に取らないという選択肢はなかった。
書籍化にあたり大幅に加筆されたという富士見L文庫から刊行された『ひとりぼっちのソユーズ』は、厳密には「カクヨム」にて掲載されているものと同じではない。
作品を読み始めて、すぐに世界観に引き込まれた。
少女の語る夢を背負い続け、宇宙を目指す少年の物語。
甘い言葉で語られる夢と如何ともしがたい現実の一線の引き方が絶妙で、何度も現実に打ちのめされながらも、間違えながらもがきながらも、前に進もうとする主人公の少年の姿がとても印象に残っている。
幼い頃に戯れみたいに語り合った夢がどうしようもない程に大きくなって、ようやくその夢の大きさに気付く頃には何もかも手遅れで。
それでも、必死でがむしゃらに手を伸ばそうとする姿が痛々しくも眩しくて。
いわゆる「せつない」小説に分類されると私は思っているけれど新海誠、三秋縋、河野裕あたりの作品がすきな人には間違いなく刺さる作品だと思う。
上記の方々の作品がすきな人には自信をもっておすすめしたい。
開幕ひとこと言わせてほしいことがある。
もしかしたら今年はもうこれ以上の作品が見つからなくたっていいと思えるような物語に出会ってしまった。
これは私が『ひとりぼっちのソユーズ』を読み終えて書いた感想の書き出し。
この言葉に嘘偽りなどないし、今振り返っても過言ではなかったと思えるくらいに私にとって大切な一冊になった。
作品を読み終えて書いた感想を、今こうして読み返すだけで胸がいっぱいになる。
こんなに心を動かした作品の刊行が失敗だったなんて、私は絶対に思わない。
もしかしたらつまらない作品だと思う人も中にはいるかもしれない。
やっぱり失敗だったなと思う人もいるかもしれない。
人の好みはそれぞれであることはもちろん理解しているし、否定するつもりもない。
それでも、私の心を痛い程に締め付けたこの作品を書籍として世に出すことが失敗だったと言われたという事実がどうしようもなくかなしくて、そんなことはないとちゃんと言葉にしておきたくて、勢い任せに作品への思いを書いた。
私と同じように書籍化されたからこそこの作品と出会うことができて、大切な物語のひとつになった人が他にも大勢いると信じている。
だから、小さなブログではあるけれど私は声を大にして何度でも言う。
間違っても、『ひとりぼっちのソユーズ』の書籍化は失敗なんかじゃない。
you copy?
ひとりぼっちのソユーズ 君と月と恋、ときどき猫のお話 (富士見L文庫)
- 作者: 七瀬夏扉,吉田健一
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2017/12/15
- メディア: 文庫
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