『烏丸ルヴォワール』 円居挽
『丸太町ルヴォワール』に次ぐ、ルヴォワールシリーズ2作目。
言葉を以って論理を闘わせる私的裁判、双龍会の濃密さはもちろん、前作から引き続き登場する人物たちの人となりが掘り下げられる今作。
まずは言いたい。瓶賀流がすきです。
前作『丸太町ルヴォワール』の感想はこちら。
※前作含め、ネタバレを含みます。未読の方はまず書店に赴きシリーズの始まりである『丸太町ルヴォワール』をご購入ください。よんで。
あらすじ
京都に伝わる稀覯本(きこうぼん)『黄母衣内記(きぼろないき)』。その所有者が謎の死を遂げた。事故か他殺か。そして継承を巡り兄弟争いが勃発。私的裁判・双龍会(そうりゅうえ)が開かれることに。その準備の中、瓶賀流(みかがみつる)は伝説の龍師「ささめきの山月(さんげつ)」から、一人の少女と行動を共にすることを依頼される。だがそれは仲間達との敵対を意味していた。
予測のつかない謎は、貴方を虜にする。
「ルヴォワール」シリーズ、第二弾。
(「BOOK」データベースより)
一向に気の抜けない双龍会
今回、双龍会が始まるまでに割かれているページ数が多くて、これは明らかに双龍会への伏線のためにあるのだと分かりながらも、どのピースを合わせればいいのか分からずどきどきしながら読み進めていた。
双龍会は始まりからエンジン全開。
急に梯子を外された達也たちと窮地に立たされる流。
こんなに信用ならない人たちがいる世界で生きている龍師たちが、家族などの無条件で安心できるつながりを大事にするのが一層納得できる気がする。
この双龍会にて形成が二転三転する展開は本当に熱いし楽しいしわくわくする。
聴衆として展開を見守ることができる上に、双龍会に立たされた人たちの気持ちもわかるので本を持つ手に一層力が入ってしまう。
当初、成り行き上対立構造を取っていた流と達也たちが双龍会では協力しながら強敵と立ち向かっていく展開も本当によくて。
ロジックの展開やどんでん返しも魅力ではあるけれど、何よりロマンが詰まりすぎている。
敵対したささめきの山月の底知れぬ雰囲気も相まって前作以上に固唾を飲む展開が多い今作だった。
龍師としての瓶賀流の正義
今作の主人公、私は瓶賀流だと信じて疑わない。
前作で完全に引き立て役の道化だった流が、そのことを含め龍師としてコンプレックスを抱いていた流が、ひとりの少女の願いのために双龍会に臨むの、格好良すぎる......。
「あたしの仕事はお前の願いを叶えることだ。ガキの嘘ぐらい本当にできなくて何が龍師だよ」
真実よりも確からしさが重視される双龍会でのこの台詞、本当にすき。
少女の願いを叶えたいという流の思いと、龍師として譲れない一線を引く覚悟が感じられる。
達也たちだけでなく蟹江たちも含めて、いろんな人たちの力を借りながら泥臭くも前に進むことができるのが流のいいところだと私は思っている。
人に好かれやすい鳥辺野さんとの類似性や関係性も本当にすきで、流もまた誰かの憧れになっていくのがとても素敵。
「大人になるのはまた明日」という言葉の響きが私には優しく思える。
そして、物語を読み終えた今。繰子の気持ちがとてもよく分かる。
また流と繰子のふたりで双龍会に臨む場面が見たい、例えそれが敵対する関係であっても見たい。
落花の影武者として連れまわされながら交わした言葉がこうして今の流を形作っていて、同じようにまた言葉が少女を救っていくのが本当に良かった。
本陣達也の物語
冒頭の達也の学園での物語、普通に大学生になった達也が情報収集のためにもぐりこんだ話だと思ったら、気付いた時には見事に騙されていた。
今の私にとっては達也の過去にまつわる話にはベールで被われた部分が多くて、高校生の頃、彼が何をして何を犠牲にしたのかまだ良く分かっていない。
つい先日、達也の名字がまだ本陣だった頃の物語が刊行されたと聞いたので、一層ルヴォワールシリーズを読まねくてはという気になっている。
達也の過去の物語ということはもちろん今回大活躍した流も出る可能性は十分にあり得るので、シリーズ作を読み終えた後に『さよならよ、こんにちは』を読む楽しみがまた増えた。

